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書籍の詳細

2001年宇宙の旅

2001年宇宙の旅』(にせんいちねんうちゅうのたび、原題:2001: A Space Odyssey)は、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックのアイデアをまとめたストーリーに基いて製作された、SF映画およびSF小説である。映画版はキューブリックが監督・脚本を担当し、1968年4月6日にアメリカで公開された。小説版は同年6月にハードカバー版としてアメリカで出版されている。

あらすじ

人類の夜明け(THE DAWN OF MAN)

遠い昔、猿人が他の獣と変わらない生活を送っていた頃。ある日猿人たちの前に、黒い石板のような謎の物体「モノリス」が出現する。やがて1匹の猿人が謎の物体の影響を受け、動物の骨を道具・武器として使うことを覚えた。獣を倒し多くの食物を手に入れられるようになった猿人は、反目する別の猿人の群れに対しても武器を使用して攻撃する。一匹の猿人を殺害し、水場争いに勝利した猿人が、歓びのあまり、骨を空に放り上げると、これが最新の軍事衛星に変る(人類史を俯瞰するモンタージュとされる)。

月に人類が住むようになった時代。アメリカ合衆国宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士は、月のティコクレーターで発掘された謎の物体「TMA」(Tycho Magnetic Anomaly, ティコ磁気異常、通称「モノリス」(一枚岩))を極秘に調査するため、月面クラビウス基地に向かう。調査中、400万年ぶりに太陽光を浴びたモノリスは強力な信号を木星(小説版では土星)に向けて発した。

木星使節(JUPITER MISSION)

18か月後、宇宙船ディスカバリー号は木星探査の途上にあった。乗組員は船長のデビッド・ボーマンとフランク・プール、出発前から人工冬眠中の3人の隊員と、史上最高の人工知能HAL(ハル)9000型コンピュータであった。

順調に進んでいた飛行の途上、HALはボーマン船長に、この探査計画に疑問を抱いている事を打ち明ける。その直後HALは船のAE35ユニットの故障を告げるが、ボーマン船長が確認すると問題は見つからなかった。HALの異常を疑ったボーマン船長とプール船長は、その思考部を停止させることを決める。しかしこれを察知したHALが、それを阻止しようと乗組員の殺害を決行する。プールは船外活動中に宇宙服の機能を破壊され、人工冬眠中の3人は生命維持装置を切られてしまう。

唯一生き残ったボーマン船長はHALの思考部を停止させる。本来であれば木星到着後に搭乗員全員に聞かされる動画が突然再生され、探査の真の目的であるモノリスの件を知ることになる。

木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)

単独で探査を続行した彼は木星の衛星軌道上で巨大なモノリスと遭遇、スターゲイトを通じて、人類を超越した存在・スターチャイルドへと進化を遂げる。

メカニック

特筆しない限り、詳細部分に関する記述は小説版を参考としている。#小説版も参照。

ディスカバリー号
アメリカ合衆国所属の宇宙船。UNCOS登録番号01/283、コールサイン「Xレイ・デルタ1(XD1)」。映画版では「ディスカバリー1号」とも呼ばれている。2001年時点では最高速の宇宙船で、元々は2年に及ぶ木星への有人往還飛行「木星計画」の為に建造された物だったが、TMA・1の発見に伴い、TMA・1が発した電波の行き先の調査へと任務が変更された。なお、映画版と『2010年宇宙の旅』では目的地は木星のままであるが、小説版では最終的な目的地は土星の衛星ヤペタスに変更されており、木星では大気探測機の投下と重力によるスイングバイを行うのみとなっている。
全長は100m・120m・150mと諸説ある(後述)が、『2010年宇宙の旅』では約100mに設定された。船体は前から、居住区画となる半径6mの与圧球体、長さ90mほどの棒状構造物、原子炉と低推力プラズマ・ドライブからなる推進システムの三つで構成されている。その構造上大気圏内での運用は考慮されておらず、建造は地球の軌道上で、試験飛行は地球 - 月間で行われた。乗員は5名で、彼らに加えて人工知能HAL 9000が搭載されている。なお、乗員のうち3名は目的地に到着するまで人工冬眠に入っている。
与圧球体内部にはコントロール・デッキ、生命維持システム、キッチン、トイレ、乗員5名分の私室、人工冬眠カプセルなどが存在し、球体の赤道部分に納められた直径10.6mの遠心機が10秒に一回の割合で回転することによって、地球の6分の1ほどの人工重力を発生させている。また、球体下部には3つのエアロックを有する格納庫があり、スペースポッド3機が格納されている他、小説版ではセラミック製の融除式熱遮蔽材によって防護された爆弾型の無人大気探測機を2機搭載している。
棒状構造体は居住区画と推進システムを連結するもので、中央部に地球との通信に用いられるパラボラ型の長距離メイン・アンテナが設置されており、HALが故障すると予測したAE35ユニットはこのアンテナの指向ユニットである。この他、小説版ではV字型に配置された一対の放熱フィンと4基の液体燃料タンクを装備しているが、映画版ではこれらの物は見受けられない。
推進システムは一種の原子力ロケットで、6基のスラスターを有しているが、使用するのは月軌道から発進する際のみで、通常は慣性による航行を行い、原子炉は船内の電力供給などに使用されるのみとなる。また、細かい姿勢制御には別に制御ジェットを使用する。
小説版ではディスカバリー号の旅は片道のみであり、土星軌道に到達して100日の探査活動を終えた後には、乗員は5年間の人工冬眠によって今後建造される同型船ディスカバリー2号による回収を待つ予定であったが、『2010年宇宙の旅』時点でもディスカバリー2号は未完成の状態にあり、ディスカバリー号の調査にはソ連の宇宙船コスモナウト・アレクセイ・レオーノフ号が用いられている。
スペースポッド
ディスカバリー号に搭載されている船外活動カプセル。搭乗者は宇宙服を着用する。大まかな形状は直径約2.7mの球体で、機体前部に円形の張り出し窓と4基のライト、更に「ウォルドー」とも呼ばれる二対の作業用マニピュレーターが装備されている。マニピュレーターのうち一対は重労働用、もう一対は精密作業用で、この他に各種工具を有する伸縮式のタレット台が備わっている。また、推進はメイン・ロケット、姿勢制御は飛行姿勢制御ノズルによって行う。
小説版では各ポッドに女性名からなる愛称が付けられており、ディスカバリー号に搭載されている3機の愛称は「アナ」「ベティ」「クララ」となっている。
オリオン3型宇宙機
地球と軌道上の宇宙ステーションの往還に利用されるスペースプレーン。翼幅は60mほどで、映画版では菱形翼の無尾翼機だが、小説版では後退翼を持つとされている。映画版では描写されていないが、機体は本体である上段とブースターである下段の二つの部位から構成されており、下段は上昇中に切り離されて自動的に発射基地に帰投する(映画版では上段のみ登場)。また、打ち上げにはケネディ宇宙センターに設置された、多重レールを持つ発射軌条が使用されている。
乗客定員は20名で、更に操縦士、副操縦士、スチュワーデス1名が搭乗する。なお、宇宙空間では機内が無重力となるが、乗員の体の固定方法は映画版と小説版で異なり、映画版ではグリップシューズが、小説版では靴底がカーペットと噛み合うように細工されたベルクロ・スリッパが用いられている。
映画版ではパンアメリカン航空によって運行されており、機体にロゴマークが描かれている他、操縦席のコンソールにはIBMのロゴマークが見受けられる。また、小説版では同種の機体として、チトフ5型スペースプレーンという機体が登場している。
宇宙ステーション5
地球 - 月間の中継点として使用されている宇宙ステーション。上記の名称は映画版のもので、小説版では「宇宙ステーション1号」となっている。直径300mのリングが二つ組み合わさった形状をしており、軸部分にドッキング・アームを有する開口部を有している。リング部は一分間に一回転し、遠心力による人工重力を生み出している。なお、宇宙機がステーション内に進入する際、映画版では宇宙機側がステーションの回転に姿勢をシンクロさせているが、小説版では軸部分がリングとは逆方向に回転し、相対的に回転を打ち消している。
宇宙ステーション内部に入る際には声紋識別装置を備えた検問口を通過する。なお、この検問口はアメリカ管区、ロシア管区などに分かれているが、これは純行政的な区分でありステーション内部にこの様な区分けは無い。
リングの縁には旅客ラウンジがあり、ソファ、小テーブル、公衆テレビ電話やレストラン、郵便局、理髪店、ドラッグストア、映画館、みやげもの売店などが設けられている他、映画版ではヒルトンホテル、AT&T、ハワード・ジョンソンズなどといった実在企業がブースを出店している。
アリエス1B型月シャトル
宇宙ステーションと月面の往還に用いられる宇宙船。「宇宙の荷馬」という渾名を持つ。船体は球形をしており、着陸時に上面になる部位に操縦席を、下面に4本の着陸用ショック・アブソーバーを備えている。
船内には座席が円形に配置された定員30名の旅客セクションや無重力トイレがあり、乗客乗員はオリオン3型と同様に、映画版ではグリップシューズ、小説版ではベルクロ・スリッパを着用している。また、小説版にはトイレの描写があり、遠心力で地球の1/4程の人工重力を発生させてから用を足すようになっている。
ロケット・バス
月面上での移動に使用されている小型の宇宙船。映画版のみの登場。形状はその名の通りバスに類似している。乗員は数名程度で、船体下部に6基のスラスターと3基の着陸脚を、船体両脇にエアロックを有している。
小説版での同様のシーンでは、8個のフレックス車輪を持つ大型の月面車が登場している。こちらの乗員は20名、移動研究所的な性格を持ち、緊急時には4基の下部ロケットを用いて跳躍することも可能。

キャスト

  • 日本語吹替 - 初回放送1981年10月25日21:00-23:44『日曜洋画劇場』(ステレオ音声・本編ノーカット放送)
その他吹替 - 木下秀雄、山内雅人、松下達夫、瀬能礼子、遠藤由香里、近藤多佳子、横尾まり、岡のりこ、酒井志満、大滝進矢
追加収録その他吹替 - 世古陽丸、久保田健介
演出:佐藤敏夫、翻訳:飯嶋永昭、選曲:重秀彦、効果:PAG、調整:前田仁信、テレビ朝日担当:圓井一夫、制作:東北新社
  • 2016年12月29日にWOWOWで放送される際、再放送時にカットされた部分を追加録音した物が放送された。その際、故人の声優が担当していた箇所は別の声優が代役を務めている。
  • 2018年11月21日発売のHDリマスター版BDには、上記のWOWOWで放送された追加録音版が収録。

スタッフ

  • 製作・監督:スタンリー・キューブリック
  • 脚本:スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク
  • 撮影監督:ジェフリー・アンスワース、ジョン・オルコット
  • 特殊効果監督:スタンリー・キューブリック
  • SFX:ウォーリー・ビーバーズ、ダグラス・トランブル、コン・ペダースン、トム・ハワード
  • 特殊メイク:スチュアート・フリーボーン
  • 編集:レイ・ラヴジョイ
  • 衣装:ハーディ・エイミーズ
  • 美術:トニー・マスターズ、ハリー・ラング、アーネスト・アーチャー

作品解説

撮影は1965年12月30日に開始し、イギリスのMGM-British Studios(ボアハムウッド)を中心拠点にして進められた。翌1966年5月までに俳優の演技シーンを撮り終えたが、SFXシーンの完成までさらに1年半以上を費やした。製作費は予定の600万ドルを大きく超過し1050万ドルに達した。

映画は70mmシネラマ規格で制作された。キューブリックは映像表現にシネラマスクリーンでの上映効果を最大限に狙っている。視覚効果ではキューブリックの前作『博士の異常な愛情』でB-52の特撮を担当したウォーリー・ビーバーズのほか、ダグラス・トランブル、コン・ペダースン、トム・ハワードなど少人数しかクレジットされていないが、実際には巨大なプロジェクトであり、視覚効果デザインの上で科学考証に多くの科学者、研究者が参加している上、撮影でも10年を経てイギリスで特撮チームを率いることになるブライアン・ジョンソン(『エイリアン』1、2)、ゾラン・ペリシック(『スーパーマン』)、マット画合成を担当したリチャード・ユリシッチを含むデザイナー、撮影や現像、合成、アニメーションのスペシャリストが多数参加している。

ディスカバリー号の乗員達が食べる宇宙食は、NASAが実際に開発して本作のために提供したものである。また本作に登場するコンピュータの設定や画面はIBMが協力しており、当初は随所にIBMのロゴがあしらわれていたとされる。しかしながら制作中に「コンピュータが人間を殺害する」というストーリーであることが判明したため、IBMは手を引き、ロゴもすべて除去された。取り残されたIBMロゴが、アリエス1B型の計器盤およびディスカバリー号乗員が着用する宇宙服の左腕コンソールについている。

当初キューブリックは美術担当として漫画家の手塚治虫の協力を仰いだが、当時の手塚は連載漫画の他に、テレビアニメ番組を多数抱え、日本国外での映画制作に携わることは物理的に不可能であったため、オファーを断った。「200名もの人間を食わせなければならないので」云々と云う主旨の返信を送ると、キューブリックは「家族が200人もいるのか?!」と驚嘆したという。手紙自体は紛失してしまったが、封筒の写真は手塚のエッセイ本に掲載されている。

脚本

キューブリックが異星人とのファーストコンタクトを描く映画を撮影すると決めたときに、その科学考証や共同脚本などをアーサー・C・クラークに依頼をした。

クラークはすでに、宇宙人と人類のファーストコンタクトを描いた小説『前哨』(ハヤカワ文庫の同名短編集などに収録)を1948年に発表していた。のちにクラークが発表した『失われた宇宙の旅2001』によると、キューブリックとクラークがアイデアを出し合い、まずはクラークが「小説」としてアイデアをまとめあげ、その後キューブリックが脚本を執筆している。

撮影技術

オープニングなどではモンタージュが駆使された。カメラマン出身で撮影技術に長けたキューブリックは、SFX撮影スタッフと共に「フロントプロジェクション」や「スリットスキャン(スリット越しに被写体を、シャッターが開いた状態で撮影する技術)」といった新たな撮影方法を考案した。

宇宙空間では大気が存在せず、遠くの物体も鮮明に見えることから、カメラのレンズを極限まで絞り込み、それによって不足した光量を補うために1フレームに4秒以上の超低速度撮影が使用されている。

作中、宇宙船のコンソール等の各所にワイヤーフレームによる3次元コンピュータグラフィックス風の映像が埋め込まれているが、それらは全て実物のコンピュータグラフィックスではなく、手作業などで描かれたものである(Sketchpadなど、まだ実物のコンピュータグラフィックスは研究室の時代であった)。

キューブリックは飛行機恐怖症のため猿人達のシーンをアフリカでは撮影できず、撮影班をアフリカに送って大面積のスチル写真を撮影し、スタジオでフロント・プロジェクションを使った合成を行っている。スターゲートの映像の中には色彩が加工されたモニュメント・バレーの空撮映像も含まれており、アメリカで行われるプレミアのため、キューブリックはアメリカに向かう船の中で編集作業を行った。

画像合成の簡略化を図ったため、どの宇宙船も宇宙に浮かぶ地球や月や木星を画面内で滅多に横切らない。また、本作に登場する地球の姿は実際より青白くなっているが、これは撮影当時、地球の姿を正確に知ることができなかったからである。

本作で使用された宇宙船の模型は他作品への流用を防ぐため、キューブリックの指示で図面も含めて廃棄処分されたことから資料が少なく、舞台となるディスカバリー号でも撮影に使われた模型の全長が57フィートと54フィートの説があり、左側面は資料が存在しないなど不明な点が多い。2018年10月25日には海洋堂が研究書の写真などからディテールを補完した1/10スケールモデルの受注生産を開始した際には54フィート説を採用した。なお『2010年』の撮影に当たっては『2001年』の映像を参考に約100mと設定された模型が新規に作成された。現存するのはアリエス1B型月シャトルのみであり、アメリカ映画芸術アカデミーが所有している。

音楽

それまでのSF映画では未来的イメージの電子音楽などが用いられることが多かったが、当作品の映画版では、全篇にわたってクラシック音楽の名高い楽曲が数多く用いられている。

ジェルジ・リゲティには一切映画についての説明や承諾もないまま、彼の曲を4曲採用した。リゲティが印税を受け取ったのは、1990年頃になってからだという。

なお、(1)メインタイトル、(2)「人類の夜明け」、(3)ラストと合計3回使われている『ツァラトゥストラはかく語りき』の演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のデッカ・レコード録音版だが、デッカ(1968年当時は日本国内ではロンドン・レーベル)が演奏者名を出さないことを許諾の条件としたので、映画のエンド・クレジットでは曲名しか表示されていない。

終盤ボーマン船長が年齢を重ねていくシーンでは、BGMに『南極交響曲』を使用したバージョンもつくられた。

「入場曲」および休憩時「間奏曲」の『アトモスフェール』、「退場曲」の『美しく青きドナウ』は、映像ソフトでは1989年発売のクライテリオン版LD-BOXまではカットが慣例化しており、休憩のクレジット自体も初期の映像ソフトではカットされていた。

使用された音楽

  • 上映前の「入場曲」および休憩時の「間奏曲」(リヴァイヴァルでは黒味のまま映写)にはジェルジ・リゲティの『アトモスフェール』。
  • メイン・タイトルにはリヒャルト・シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』の導入部。
  • ヒトザルたちがモノリスに遭遇する場面でのリゲティの『ソプラノ、メゾ・ソプラノ、2つの混声合唱と管弦楽のためのレクイエム』。
  • ヒトザルが骨を武器にすることに目覚めるシーンでは、再びリヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』導入部。
  • アリエス1B型が月へ向かう場面でのヨハン・シュトラウス2世の円舞曲『美しく青きドナウ』。
  • 月面をムーンバスが低空飛行する場面でのリゲティの『ルクス・エテルナ(永遠の光を)』。
  • フロイド博士らが発掘されたモノリスを見る場面では、再びリゲティの『レクイエム』。
  • ディスカバリー号が木星に向かう途上でのアラム・ハチャトゥリアンの『ガヤネー』(ガイーヌ)から「アダージョ」。
  • HAL9000が乗員の会話を読唇したところで休憩に入り、リゲティの『アトモスフェール』が再び流れる。
  • 意識がうすれつつあるHAL9000が「デイジー・ベル」(作曲:Harry Dacre、1892年)を歌う(1961年にIBM社のチームが電子計算機による合成歌唱を世界で初めて実演したときの曲が「デイジー・ベル」であったことにちなむ)。
  • 木星に近い空間をモノリスが浮遊している場面では、再三、リゲティの『レクイエム』。
  • 木星空間からのめくるめく異次元への突入にはリゲティの『アトモスフェール』や『ヴォルーミナ』など。
  • ボーマン船長が到着した白い部屋ではリゲティの『アヴァンテュール』など。
  • ラストのスターチャイルドが地球を見下ろす場面では、再三、リヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』導入部。
  • エンド・クレジットおよびその後の「退場曲」にはヨハン・シュトラウス2世の『美しく青きドナウ』。

未使用となった音楽

キューブリックは当初、自分の監督作品『スパルタカス』の音楽を手がけたアレックス・ノースに作曲を依頼し、前半部分まで完成したスコアの録音まで完了していた(この最中にノースは過労で倒れてしまった)。しかしそれ以降は一切の連絡もないままノースの音楽を没にし、リヒャルト・シュトラウスなどの音楽に差し替えてしまう。ノースがそのことを知ったのは、試写会の会場であった。ノースはこれに激怒し、訴訟寸前にまで至った。ノースの死後、友人のジェリー・ゴールドスミスは没になった彼の音楽を録音し、1993年10月12日にヴァレーズ・サラバンド・レコーズから『Alex North's 2001 』(VSD-5400)としてCD発売した。日本でも『2001年〜デストロイド・ヴァージョン〜』(1993年12月1日発売、サウンドトラック・リスナーズ・コミュニケーションズ(SLC)、SLCS-5021)のタイトルで発売されている。

更に、1968年に録音されたアレックス・ノースのオリジナル・スコアのマスターテープが発掘され、2007年1月26日に Intrada Records より『Music for 2001: A Space Odyssey (The Original Score by Alex North) 』としてCD化され、3000セット限定で発売された。

公開

当初予定の1966年から1年4か月遅れ、アポロ11号が月面着陸を果たす前年の1968年に公開された。ワールドプレミアは1968年4月2日にワシントンD.C.のアップタウン劇場で行われた。アメリカでの一般公開日は1968年4月6日、イギリスでの公開は1968年5月15日だった。度々再公開されており、2014年11月イギリスでの再公開にあたってはアルフォンソ・キュアロン、クリストファー・ノーランによる賛辞が予告編に盛り込まれている。

日本での公開

日本においては1968年4月11日に公開されている(~9月18日まで)。更に、年末の各紙誌の高評価を受け、翌春(1969年3月1日~4月4日)、「凱旋興行」と銘打ってテアトル東京で再上映された。

その後、初公開から10年後の1978年に再びロードショー上映され、折からのSFブームをフォローアップする形となった。作品の設定年である2001年にも「新世紀特別版」としてノーカット版で公開されている。このヴァージョンでは、本来35mmフィルムでアナモフィック・レンズを使用して再現されるスコープサイズのアスペクト比の1:2.35とせず、35㎜フィルムの上映で70mmのオリジナルと同一のアスペクト比1:2.20を再現している。

2018年10月,6~7,11~14日に国立映画アーカイブで70mmニュープリントフィルムでの同作の特別上映が行われた。10月19日から二週間限定で70mmフィルムからリマスタされた物がIMAXデジタル・シアター・システムを備えた映画館で公開された。

【参照】『2001年宇宙の旅』の日本での上映実績のまとめ http://kubrick.blog.jp/archives/52256322.html

反響・評価

公開当時、台詞や説明を極力省き、視覚表現で観客の意識に訴えるという作風は極めて斬新であった。映像のクオリティーや「人類の進化と地球外生命の関係」という哲学的なテーマを賞賛する声の一方、抽象的な内容や非常に難解な結末を批判する意見もあり、賛否の渦が巻き起こった。公開直後は興行成績も振るわなかったが、再公開を経て評価が高まり、現在では世界映画史に残る不朽の名作のひとつとして認識されている。日本の文部科学省が「特選」に指定している、唯一のSF映画としても知られている。

初公開の年の暮れ、1968年12月、アポロ8号が史上初めて月の裏側を廻って帰還したが、その時撮影された月面入れ込みの地球の写真が本作のそれにそっくりで、改めて本作の特撮のクオリティが示された。またそのアポロ8号の船長の名がフランク・ボーマンで、本作の登場人物のふたり、フランク・プールとデヴィッド・ボーマンを合成したような名前であることが、偶然とはいえ話題になった。

公開からかなり時間が経った後も、本作品は高く評価され続けている。1991年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。

ランキング

映画史上のベスト・ランキング、オールタイム・ベストなどでは、必ずと言っていいほどランクインしている。

  • 「映画史上最高の作品ベストテン」(英国映画協会『Sight&Sound』誌発表)
    • 1972年:「映画批評家が選ぶベストテン」第18位
    • 1982年:「映画批評家が選ぶベストテン」第12位
    • 1992年:「映画批評家が選ぶベストテン」第10位
    • 1992年:「映画監督が選ぶベストテン」第13位
    • 2002年:「映画批評家が選ぶベストテン」第6位
    • 2002年:「映画監督が選ぶベストテン」第12位
    • 2012年:「映画批評家が選ぶベストテン」第6位
    • 2012年:「映画監督が選ぶベストテン」第2位
  • 「AFIアメリカ映画100年シリーズ」
    • 1998年:「アメリカ映画ベスト100」第22位
    • 2001年:「スリルを感じる映画ベスト100」第40位
    • 2003年:「ヒーローと悪役ベスト100・悪役部門」第13位(HAL 9000)
    • 2005年:「アメリカ映画の名セリフベスト100」第78位
    • 2006年:「感動の映画ベスト100」第47位
    • 2007年:「アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)」第15位
    • 2008年:「10ジャンルのトップ10・SF映画部門」第1位
  • 2000年:「20世紀の映画リスト」(米『ヴィレッジ・ヴォイス』紙発表)第11位
  • 2008年:「歴代最高の映画ランキング500」(英『エンパイア』誌発表)第16位
  • 2008年:「史上最高の映画100本」(仏『カイエ・デュ・シネマ』誌発表)第43位
  • 2010年:「エッセンシャル100」(トロント国際映画祭発表)第26位
  • 2013年:「オールタイムベスト100」(米『エンターテイメント・ウィークリー』誌発表)第25位

以下は日本でのランキング

  • 1980年:「外国映画史上ベストテン(キネマ旬報戦後復刊800号記念)」(キネマ旬報12月下旬号発表)第2位
  • 1988年:「大アンケートによる洋画ベスト150」(文藝春秋発表)第7位
  • 1989年:「外国映画史上ベストテン(キネ旬戦後復刊1000号記念)」(キネ旬発表)第1位
  • 1995年:「オールタイムベストテン・世界映画編」(キネ旬発表)
    • プロフェッショナル選出 第3位(1位は『七人の侍』なので洋画では第2位)
    • 読者選出 第1位
  • 1999年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・外国映画編(キネ旬創刊80周年記念)」(キネ旬発表)第2位
  • 2009年:「映画人が選ぶオールタイムベスト100・外国映画編(キネ旬創刊90周年記念)」(キネ旬発表)第7位

受賞

本作は1968年のアカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞、また1969年のヒューゴー賞も受賞した。

小説版

小説版が原作として先に書かれたものであると勘違いされることが多いが、小説は映画の公開の後に発表されている上、その小説にはアーサー・C・クラーク独自の解釈がかなり取り入れられていることからも、小説版と映画版は明確に区別する必要がある。

映画と小説版では若干ストーリーが異なっており、例としてディスカバリー号の目的地は、小説版では土星だが、輪の特撮が困難ということで、映画版では木星となった。小説ではクラークの意向により、木星を利用したスイングバイという設定を用い、土星と木星両方にディスカバリー号を行かせている。

HAL 9000の反乱の要因やラストの展開も、小説版は論理的に説明づけられているのに対し、映画版は謎めいた展開となっている。これは当初、映画冒頭に科学者らが人類の進化など作中の話題に関して語るインタビュー映像が予定され、また全編にわたってストーリーを解説するナレーションを入れる予定であったものが、過剰な説明が映画からマジックを奪うことを恐れたキューブリックが、インタビューもナレーションもすべて削除してしまったため、何の説明もない映像が映画全編にわたり続くことになったからである。

ヒトザルとモノリスの遭遇は小説では300万年前という設定だが、映画では400万年前とされているなど、細かな点の相違は多い。小説ではディスカバリー号には放熱板(「放射翼」)、それもかなり大きなものが付いている設定になっているが映画のディスカバリー号には付いていない。ある解説によれば、宇宙なのに(空気を前提とした)翼なんて、と思われるのを恐れて、映画版では付けていないのだという。

後にクラークが執筆した『2010年宇宙の旅』はパラレルワールドとされ、ストーリーの多くの部分は続編の形を取りながら、主な舞台は木星周辺となっており、そこだけは映画版と同一になっている。「宇宙の旅」シリーズは、更に『2061年宇宙の旅』『3001年終局への旅』と、計4作執筆されており、シリーズ作品全ての作中設定は前作までの多くの部分を踏襲してはいるが、基本的にはパラレルワールドであるとあとがきやまえがきで触れられている。

邦訳

  • 『S-Fマガジン 1968年9月号 臨時増刊』「宇宙のオデッセイ2001」伊藤典夫:訳
  • 『宇宙のオデッセイ2001』(1968年10月15日初版発行、伊藤典夫:訳、ハヤカワ・ノヴェルズ)
  • 2001年宇宙の旅』(1977年、伊藤典夫:訳、ハヤカワ文庫SF)
  • 『決定版 2001年宇宙の旅』(1993年、伊藤典夫:訳、ハヤカワ文庫SF、クラークの新序文が収録)

サウンドトラック盤

LP
  • MGMレコード(日本グラモフォン SMM-2012)
    全6曲、計8トラック収録、30cm/33.3rpm。最初に発売された「サウンドトラック盤」だが、『ツァラトゥストラはかく語りき』が、映画で使用されたヘルベルト・フォン・カラヤン指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏ではなく、カール・ベーム指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏が収録されている。
EP
  • MGMレコード(日本グラモフォン SKM-1081)
    上記LPからの抜粋で、「ステレット33」と称する17cm/33.3rpmのコンパクト盤。『ツァラトゥストラはかく語りき』、『レクイエム』、『美しく青きドナウ』の3曲だけだが、『ツァラトゥストラはかく語りき』は最初と最後に2回収録されている。
CD
  • ポリドール(POCP-2017、1991年5月1日発売)
    上記30cmLPのCD化。ほぼ同内容であり、『ツァラトゥストラはかく語りき』は、ベーム/ベルリン・フィル版が収録されている。
  • 東芝EMI(TOCP-65139、1999年1月27日発売)
    カラヤン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏の『ツァラトゥストラはかく語りき』が収録されている。しかし、英文のトラック・リストには Vienna Philharmonic Orchestra とあるにもかかわらず、日本語のライナーノートでは「ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」となっている。映画のサウンドトラックから採られたHAL 9000の声なども収録されている。
  • ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(SICP2703、2010年6月2日発売)
    上記、東芝EMI盤と同内容。

備考

  • スタンリー・キューブリックは、1999年3月7日に死去したため、生きて「2001年」を迎えることは叶わなかった。
  • 宇宙ステーションでの声紋識別装置の操作卓をよく見ると、言語選択肢に「JAPANESE」がある。
  • 月面でモノリスの前を歩くシーンでは、宇宙服のヘルメットに手持ちカメラを構えるキューブリックの姿が映り込んでいる。
  • 自作で65mmフィルムを使い続けるクリストファー・ノーランとホイテ・ヴァン・ホイテマが製作50周年となる2018年本作の4K修復を監修した。数々の修繕を受けながらソフト化に用いられて来たアーカイヴ用フィルムではなく、オリジナル・ネガまで遡ったニュープリントで、デジタル補正を一切使用せず、初演時と同様の6ch音声や前奏曲、インターミッション、終演時の音楽まで再現されたこのバージョンをノーランは"Unrestored(非修復)Version"と呼ぶ。初演時の体験の再現にこだわったこの70mmニュープリントは2018年5月12日にカンヌ映画祭で初上映され、欧米を巡回したのち、日本では2018年10月6日から14日まで国内で唯一70mmフィルムの上映が可能な国立映画アーカイブにて6日間全12回の上映が行われた。
  • また、2018年にはIMAX版が製作され、同年10月19日から11月1日まで日本での上映が行われる。
  • 2018年11月21日にはUltra HD Blu-rayでの発売が予定されている。また同年12月1日には、70mmフィルムに基づく8K版をNHKがスーパーハイビジョンチャンネルで放送する事も発表している(※本放送初日午後1時10分より)。

脚注

注釈

出典

参考文献

  • アーサー・C・クラーク著 『決定版 2001年宇宙の旅』 伊藤典夫訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1993年2月、全面改訳版。ISBN 4-15-011000-X。
  • ピアーズ・ビゾニー著 『未来映画術「2001年宇宙の旅」』 門馬淳子訳、晶文社、1997年6月、もう一つのメイキング資料集。ISBN 4-7949-6303-3。
  • ジェローム・アジェル編 『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』 富永和子訳、ソニー・マガジンズ、1998年3月。ISBN 4-7897-1275-3。
  • アーサー・C・クラーク著 『失われた宇宙の旅2001』 伊藤典夫訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、2000年4月、エッセイ;草稿、短編「前哨」掲載。ISBN 4-15-011308-4。
  • 巽孝之著 『「2001年宇宙の旅」講義』 平凡社〈平凡社新書〉、2001年5月。ISBN 4-582-85092-8。
  • 町山智浩著 『映画の見方がわかる本―「2001年宇宙の旅」から「未知との遭遇」まで』 洋泉社〈映画秘宝collection; 22〉、2002年9月。ISBN 4-89691-660-3。
  • Piers Bizony著 『The Making of Stanley Kubrick's 2001: A Space Odyssey』 TASCHEN、2014年8月。ISBN 978-3-8365-4769-7。

関連項目

  • HAL 9000 - 映画・小説に登場する人工知能を備えた架空のコンピュータ。
  • ウォーリー
  • アポロ計画陰謀論 - フランスでは2002年末に、この映画を制作したキューブリックがアポロ計画の月面着陸映像を人工的に造り上げ、それをアメリカが同計画のでっち上げに用いたとする、ジョーク作品の『Opération Lune』が作成放送された。
  • 新春スターかくし芸大会 - 1982年に井上順、研ナオコ出演による「SF 2001年宇宙の恋」というパロディー版が放送された。
  • 2001マーズ・オデッセイ - 2001年に打ち上げられたアメリカの火星探査機。名称は本作に由来する。
  • イカリエ-XB1

外部リンク

  • 2001年宇宙の旅 - allcinema
  • 2001年宇宙の旅 - KINENOTE
  • 2001: A Space Odyssey - オールムービー(英語)
  • 2001: A Space Odyssey - インターネット・ムービー・データベース(英語)


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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